(に)似て非なる者を悪(にく)む
【孔子曰,惡似而非者。惡莠,恐其亂苗也。惡佞,恐其亂義也。...】出典:孟子(盡心下)
孔子曰く,似て非なる者を惡む。莠(いう)を惡むは,其の苗(なへ)を亂(みだ)るを恐るればなり。
佞(ねい)を惡むは,其の義を亂るを恐るればなり。...
孔子は言っている,『自分は似て非なるものを悪む。たとえば莠を悪むのは,それが(穀物の)苗ににてまぎらわしいことを恐れるからである。佞弁を悪むのは,その言にあたかも義があるように聞こえるため,そのまぎらわしいことを恐れるからである。
(参考:新釈漢文大系第4巻孟子,明治書院)
莠:
えのころぐさ,ねこじゃらし(広辞苑)
佞:口先が巧みで心の正しからぬこと(広辞苑)
義:人間の行うべきすじみち(広辞苑)
続けて似て非なるものの例として 『
利口(多弁で誠実のないこと)と
信,
鄭聲(鄭の淫靡な音楽)と
樂(正しい音楽),
紫(色)と
朱(色),
鄉原(一郷の人々がいい人だという偽善の人)と
德』 を挙げている。
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さて,2300年後の日本郷は,国力の低下,景気の低迷,食糧自給率の低下,少子高齢化,格差拡大など亡国の様相である。
雇用,年金,医療・介護,食の安全など民の生存に直接かかわる危機ばかりである。
佞臣,義臣入り乱れての緊急なる百策が繚乱して,どれが莠で苗かもわからぬ。
毒まんじゅうもあるらしい。急ぎ似て非なるものを自ら見極めねばならぬ。
亡国の民の話題は,雇い止め,ワークシェアリング,出産・育児と仕事の両立,消えた・消された年金,年金支給年齢の引き上げ,医師不足,医療・介護保険料増,産地偽装,汚染米,切りがない。
しかし,これらはすべて民の
勤労と
勤労の対価に関わる問題である。そしてそれらの
使い方(消費と税)の問題なのである。
これは似ずとも非ならざぬ疑いのない国策の問題なのである。
余談
『
覇王』で,
覇は国の大きさと行いのすさまじさでどこにでも見つかるが,
王は見つからないことを書いた。『似て非なるもの』の例示も同様で,どうも孟子という人は
測れるものと
測れないものを一緒に論じるようである。
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