(つ)恙無し(つつがなし)
「日出ずる處の天子、書を日沒する處の天子に致す。恙無きや」
聖徳太子が隋の煬帝に宛てた親書の一節である。
恙無し(つつがなし):→無恙(むよう),心配がない。病気がない。無事である。(新字源)
『無恙』を書籍で拾ってみると,諸子百家では,春秋戦国時代には見つからず漢(前207年)以後9回出現している。史記(前109年-前91年)では11回出現し,それ以降よく出現している。多くは健康であることあるいはその問いかけとして用いられており,その対象は帝・王・諸侯から実母・実子にいたるまで広く用いられている。
日本に関連する記録では,例文での出現が初めてである。(607年)聖徳太子が遣隋使に託した親書を見て,隋の煬帝は不機嫌になった。(隋書倭国伝)この時点では我が国はまだ『倭』であり『日本』という国名は使われていない。
後漢時代に「東夷倭奴国(やばんでちいさい?)」と呼んでいた国から対等に「元気ですか?」と聞かれてピクリとくるのも無理はない。617年以降隋が唐に代わっ時点でも『倭』であったが,太子の行った冠位十二階などには一定の評価を与えている。その後『倭』は『日本』という名前に変えたとなっている。(旧唐書倭国・日本国伝)
改名の理由は3つあったと言われている。
1.日の出るところにあるから。
2.倭国では雅さがなかった。
3.もともと日本という小国がありそれが倭国を征服した。
何れにしても国名を定めるに至った重要な一文であることには間違いない。
さて,現在の日本国に元気がないのはなぜか?省エネ・バイオ・ロボット..環境や医療・介護に貢献できる優秀な技術が沢山ある。物理学・化学,基礎的な研究でもノーベル賞を独り占めするほどである。国家の十分な支援もなくてよくやっている,というのが正直な感想である。
緊急経済対策の内容をみても,栄養失調と睡眠不足でフラフラの人間にダイエットや筋トレを勧めているようなイメージである。そのくせ,運動不足と飽食で贅肉たっぷりの人間にさらに栄養剤を注射しようとしている。元気ですか?と労わる代わりにこう問いかけよう,正気ですか?
【大業三年、其王多利思比孤遣使朝貢。使者曰:「聞海西菩薩天子重興佛法、故遣朝拜、兼沙門數十人來學佛法。」其國書曰「
日出處天子致書日沒處天子無恙」云云。帝覽之不悅、謂鴻臚卿曰:「蠻夷書有無禮者、勿復以聞。】隋書倭国伝
【倭國者、古倭奴國也。去京師一萬四千里、在新羅東南大海中、依山島而居。東西五月行、南北三月行。世與中國通。其國、居無城郭、以木為柵、以草為屋。四面小島五十餘國、皆附屬焉。其王姓阿毎氏、置一大率、檢察諸國、皆畏附之。
設官有十二等。】旧唐書倭国・日本国伝
【
日本國者、倭國之別種也。以
其國在日邊、故以日本為名。或曰:
倭國自惡其名不雅、改為日本。或云:
日本舊小國、併倭國之地。其人入朝者、多自矜大、不以實對、故中國疑焉。又云:其國界東西南北各數千里、西界、南界咸至大海、東界、北界有大山為限、山外即毛人之國。】旧唐書倭国・日本国伝
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