「次の総選挙は,捲土重来を期す国民連合と鶏鳴狗盗の政官業連合の乾坤一擲の大勝負となりそうだ。」
捲土重来(けんどちょうらい):
一度負けた者が,態勢を立て直して再び猛烈に攻め寄せること。一度失敗した者が非常な意気込みでやり直すこと。
鶏鳴狗盗(けいめいくとう):
鶏の鳴き真似をして人をだましたり,犬のように人の物を盗んだりするような,ただ器用な才能の持ち主をいう。また,そのようなくだらない技能でも役に立つことがあるというたとえ。
乾坤一擲(けんこんいってき):
運を天にまかせ,のるかそるかの大勝負をすること。天下をかけて一回さいころを投げる意から。
(以上新明解故事ことわざ辞典)
国家の危機に乗じて,燎原の火の如く勢力を拡大する政官業の癒着の連環がある。
彼らは危機の扇動,我田引水,情報隠ぺいの才能に長け,連環に列なる者のみを守り,国民一般は蚊帳の外である。
「鶏鳴狗盗」とはまさに彼らのためにある言葉である。
金融,雇用,食糧..当ブログでもたびたび示しているのでことさら述べない。
乾坤一擲も,
類を以て集まるの段で乾は天,坤は地とふれた。
サイコロの表と裏の意味になる。
政治を博打になぞらえる愚は
国会漢字検定2日目でふれた。
今日は安らかな精神への回帰のため,捲土重来の詩を味わうことにする。
杜牧(とぼく)の「烏江亭(うこうてい)に題す」である。
「勝敗は兵家(へいか)も事(こと)期(き)せず,
羞(はじ)を包み恥(はじ)を忍ぶは是(こ)れ男児(だんじ)。
江東(こうとう)の子弟(してい)才俊(さいしゅん)多し,
捲土重來(けんどちょうらい)未(いま)だ知るべからず。」
泣かせる詩である。意味は,
「勝敗の行方は兵法家でも予測できない,
恥を耐え忍んでこそ男である。
江東の子弟には才俊が多い,
土をまきあげて再び来れば結果はどうなっていたかはわからない。」
(読下し,訳文参考は石川忠久「杜牧100選」NHK出版)
この詩を理解するには,予備知識も必要である。
漢(かん)の劉邦(りゅうほう)に敗れた楚(そ)の項羽(こうう)は,
烏江亭(うこうてい)という渡し場まで落ちのびてきた。
ここの亭長は,この川にはこの船一艘しかなく安全に渡れるから,と項羽に逃げることを勧めた。
しかし,項羽はそれを断って漢軍に突入し壮絶な最期をとげた。このくだりは
辟易の段を参照。
ここまで書いて,妙な符合に気がついた。
今取り上げている場所は「烏江」である。
そのままの意味では「カラスの川」である。
先日,
烏合の衆の段で,烏(カラス)は賢くて親孝行であり,愚者の集りでは意味が通じない。
だから,「烏合」とは「(項)羽合」の隠喩ではないかと書いた。
すると「烏江」も「羽江」の隠喩である可能性がある。
あるいは,項羽を貶めるために漢時代に改名されたのかもしれない。
詩を味わって,なんだか未知の世界に迷い込みそうな不思議な気分である。
-----------------------------------------------------------------------------------
題烏江亭
勝敗兵家事不期,包羞忍恥是男兒。
江東子弟多才俊,捲土重來未可知。