2009年01月17日

(ぬ)濡れ衣

「裁判員と言っても法律にはずぶの素人だから,濡れ衣を着せられる人が増えるだろう。」
あるいは
「将軍は『やむを得ない戦争であって,侵略だと批難されるのは濡れ衣だ』と主張している。」
などと使う。

濡衣を着る(ぬれぎぬをきる):無実の罪を受けること。また,根も葉もない悪いうわさをたてられること。(新明解故事ことわざ辞典)

濡れ衣の語源は,諸説ある。
①濡衣塚伝説など,濡れた衣が犯罪の証拠としてねつ造された。
②犯罪の結果,濡れてしまった衣を他人に着せて責任を転嫁した。
③衣が乾けば無罪,濡れたままなら有罪とみなした神明裁判が行われた。
(②③は出典不明)などである。すべて冤罪となる可能性がある。
しかし,(科学的かどうかは別にして)その時代の法を正とした裁判は行われたであろう。
上の2例はどの説に当たるのか?

ところで,法の変更が多くの人民に濡れ衣を着せることになった例がある。

...(王宮が火災になったとき下された命令はこのようなものだ)「火事から人を助けて死んだ者は,戦死した者と同じ賞とする。火事から人を助けても死ななかった者は,戦勝した者と同じ賞とする。火事で人を助けなかった者は敵前逃亡した者と同じ罪とする。」すると人々は皆泥を顔に塗り,濡衣を被って火に走っていく者が左から3000人,右から3000人...(韓非子內儲說上)

濡れ衣の原因は存外,証拠や裁判のやり方ではなく,法そのものにあるのかも知れぬ。

【“人之救火者死,比死敵之賞。救火而不死者,比勝敵之賞。不救火者,比降北之罪。”人塗其體、被濡衣而走火者,左三千人,右三千人。】韓非子內儲說上


余談

濡れ衣の語源として「実の無い(無実)から蓑(みの)ないに転じ,濡れ衣に通じる」というのもある。(出典不明)


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