2009年02月18日

(し)鹿を指して馬と為す

「馬鹿なのか阿呆なのか2兆円ぽっちで悪だくみを緊急経済対策だと言いはっている。」

文字どおり馬鹿の語源である。
しかし,もともとは下臣に欺かれた悲運の王の物語である。

鹿(しか)を指(さ)して馬(うま)と為(な)す:
理に合わない間違ったことを,権力をもってむりやりに押し通すことのたとえ。
『秦(しん)の宦官(かんがん)の趙高(ちょうこう)が,始皇帝(しこうてい)の没後,幼少の二世皇帝に,鹿を馬といって献上した。二世皇帝は笑ってまわりの者に「鹿であろう」と言ったが,群臣は趙高の権力を恐れて黙ってしまったり,「馬です」と相槌(あいづち)をうったりした。「鹿です」と言った者は趙高によりあとでひそかに処刑された。』史記
(新明解故事ことわざ辞典)

趙高は,始皇帝が行幸中に病死するとその遺言を書き換えて,太子の扶蘇を自決に追い詰め末子の胡亥を二世皇帝に即位させた。 趙高は,阿呆の語源とも言われる阿房宮の大規模な増築を進めて,人民に過重な労役を課した。秦帝国に対する反乱が全国に広がり,劉邦の軍勢が迫ってきたときに起こった事件がこの「鹿を指して馬と為す」である。そして,反対派を抑え込んだ趙高は,二世皇帝を殺し人望の厚い子嬰を三世皇帝に擁立したが,子嬰によって趙高は一族もろとも誅殺された。

阿呆が馬鹿を画策したおかげで,550年間の春秋戦国時代に終止符を打ち中国全土を統一した秦帝国はわずか15年で滅んだ。一人の奸臣が偉業を台無しにしたのである。

さて,冒頭の文にもどろう。
与党の党首は自党からも批判されている定額給付金に固執している。
その理由は,その後ろに奸臣たちの大きな悪だくみを隠しているからである。
(悪だくみの内容は安に居いて危を思う矛盾を参照のこと)
趙高が何人もいてはいかに聖君でも阿呆の振りをするのは致し方ない。
しかし,堂に入った馬鹿ぶりである。


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