2009年01月21日

(か)株を守りて兎を待つ,夏炉冬扇

「緊急経済対策の内容は株を守りて兎を待つに等しいし,これだけ遅れたら夏炉冬扇じゃないか?」と使う。

株を守りて兎を待つ(かぶをまもりてうさぎをまつ):古い習慣にこだわり,進歩がないことのたとえ。また,偶然に成功した経験に味をしめて,もう一度同じ方法によって成功しようとすることのたとえ。出典韓非子(新明解故事ことわざ辞典)

夏炉冬扇(かろとうせん):時期はずれで役に立たない物のたとえ。また,無益で役に立たない才能や言論のたとえ。夏のいろりや,冬の扇子の意から。出典論衡(新明解故事ことわざ辞典)

どれほどすごい緊急経済対策かと思って,内閣府の資料で調てみた。知らしむべからず依らしむべしなのか非常にわかりにくい資料だった。それによれば,平成10年の緊急経済対策と比べて規模は23兆円が75兆円(どう足し算しても62兆円にしかならなかったが)に増えているものの,内容に変化のないものだった。確かに省エネ・介護・子育てなどで1.3兆円ほどあるが,その中には消費者庁の設置や消えた年金の対策費も入っている。金額の大きいものでは金融・貸し渋り対策5.9兆円(H10)が52兆円になっているが,放漫経営や変化に対応できない企業救済を含んだ信用保証,銀行の不良債権買い取りのようなもので,効果のほどは疑わしい。増加分はほとんどこれである。逆に平成10年には減税(所得・事業)と地域振興券で10兆円あったものが,今回は減税と定額給付金合計で2.3兆円に下がっている。減税と給付金はGDPにとっての効果は同じであり,それが極端に下がっている。なにをもって経済通が作った予算というのだろうか?国会は末節にこだわって根本の議論を忘れている。

【因釋其耒而守株,冀復得兔,兔不可復得,而身為宋國笑。】韓非子五蠹
【作無益之能納無補之説以夏進炉以冬奏扇】論衡逢遇

余談

論衡には「周の成王の時(紀元前1020年頃),倭人が鬯草(祭酒の原料である香料の一種)を貢献した」との記述があり,事実であれば,日本人が歴史に初めて登場した記録である(文献1)。その800年後,秦の始皇帝が不老長寿の薬草を求めて徐福を東海に派遣した(紀元前210年頃)ときの終焉地は日本であるとの伝承がある。魏志倭人伝に卑弥呼が登場するのは450年後の239年,遣隋使はさらに下って607年である。徐福の向かった先は「蓬萊」、「方丈」、「瀛州」の三神山であったが,そういえば滋賀県には蓬萊山があって歴史の興味はつきない。

参考文献1:「日本漢學史」 牧野謙次郎 述/三浦叶 筆記,[日]世界堂書店,1938



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