2009年02月08日

(ふ)舟に刻みて剣を求む

「彼のメルアドを大切にしまいすぎて見つからないだって?それじゃあ舟に刻みて剣を求むのと変わらないなあ」

「大事なことを書いておいたメモがどこかへ行ってしまった。
あるいは,書類が多すぎて必要なものが探しだせない。」
_____記憶と記録のバランスをとるのはなかなか難しい。
ところが記憶も記録もちゃんとしていても役に立たない場合がある。
それが「舟に刻みて剣を求む」の故事である。

舟に刻みて剣を求む(ふねにきざみてけんをもとむ):
世の中の移り変わりに気づかず,昔からの古いしきたりを固く守っている愚かさのたとえ。
『楚(そ)の国で川を渡っていた男が,剣を川の中に落としてしまった。
男はあわてて舟べりに小刀で印をつけ,「ここが剣の落ちたところだ」と言い,
舟が向こう岸に着いてからその印の下を探したが,見つからなかった。』呂氏春秋
(新明解故事ことわざ辞典)

古いしきたり云々ではなく,「記録本来の意味」と「対応の早さの重要性」を教えている。
対応が早ければ,記憶は不要になるし,不要な記録に悩まされることもない。
これが,記憶と記録のバランスをとる最善の方法である。

さて,政府与党の2005年08月26日マニフェスト「改革を止めるな」を読みかえしてみた。

ざっくりと言って,
国民の負担増と政官業の利権強化につながるものは実現され,
国民の福利厚生,不公平の是正に関わるものは先送りの感である。

高齢者医療制度,基礎年金国庫負担,社会保険庁解体,郵政民営化,特定財源の廃止,金融サービス立国,幼児教育無償化,教員免許更新制,私学助成,児童手当,拉致問題,防衛省設置,自衛隊法改正,ODA積極活用,基礎的財政収支の黒字化,地方分権,公務員改革...

マニフェストは政権公約のれっきとした記録であるが,
やるべきことには我田引水の優先順位があるらしい。
そして,先送りは「水の流れが激しくて」と責任転嫁して恥じないようだ。
「舟に刻みて剣を求む」がこれほど実感される記録はない。
国民の忘却を密かに待っているかのようである。
まず書くべきは,
進むべき方向,いつまでにやるかの期日,できなかった場合の責任の取り方である。
そして,受けるべきは国民の審判である。


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この記事へのコメント
100年に一度の水の流れだと強調して、やることは、従来通りの物差しでの、遅さとKYですよね。
Posted by 夢想花夢想花 at 2009年02月08日 16:25
>夢想花さん
いつも見ていただいてありがとうございます。
コメントいただいて勇気がわいてきます。
自分で考えていないから。
官僚の書いた原稿そのままなので読み違いも多いのでしょう。
もっとも,自分の考えを言えば劇画的で,ピント外れで,差別的で,時代錯誤の言葉しかでてきませんが。
政治の迷走のすきに「省益」の親玉みたいなのが出てきましたね。
彼の「渡り」人生の生涯年収は8億円だそうです。
Posted by ゴンチゴンチ at 2009年02月08日 21:14
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