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Posted by 滋賀咲くブログ at

2009年01月19日

(を)温故知新

「鉱山時代の精錬の技術が,廃棄物から金を取り出すのに使えるなんてまさに温故知新だね」と使う。

温故知新(おんこちしん):故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。前に学んだことや昔の事柄をよく調べ研究して,そこから新しい知識や道理を発見すること。孔子が先生の資格として述べたことば。温(たず)ねては温(あたた)めてとも読む。(新明解故事ことわざ辞典)

温(あたた)めることが,温(たず)ねることなのか?
諸子百家の書籍に出てくる「温」の字とたずねる意味の「尋」「訊」「訪」の字の出現数を調べてみた。(下図)
「故きをたずねる」意味として使われた例は論語と禮記(どちらも孔子の言葉として)の2例以外に見当たらない。それ以外の「温」はすべて気候や温度の意味あるいは,温和など人の形容として使われている。たずねる意の3文字もそれぞれ使用されており,「温」が「たずねる」意味とする根拠は見つからなかった。



次に,「温故」は上の2例以降にどのように使われているかを調べた。(下図)



ほとんどが「溫故知新」の一語として使われており,「溫故而知新」がその語源であることを示している。つまり,この時点で意味だけが必要で,「あたためる」か「たずねる」かにこだわる必要はなくなっている。

つまり,温を「たずねる」とする根拠はなく,「あたためる」に読みを統一するべきである。

冒頭の例文は,銅鉱山及び精錬が斜陽産業となった折,雇用確保を最優先として得意技術の転用をすすめ,今では携帯電話や家電製品など廃棄物から貴金属を抽出する事業を成功させた企業への讃辞である。安易に人減らしを行う企業に人は育たず,固有技術の蓄積はないと銘すべきである。リーダーとなるには何より「あたたかみ」が必要なのである。

【子曰:“溫故而知新,可以為師矣。”】論語為政  


Posted by ゴンチ at 23:56Comments(2)故事成語