2009年01月20日
(わ)和を以て貴しと為す
「和を以て貴しと為すというが,礼節も規律もなければ単なる烏合(うごう)の衆でしかない」と使う。
和を以て貴しと為す(わをもってとうとしとなす):人々がお互いに仲良くやっていくことがもっとも大切なことである。何事も調和が大事であるということ。聖徳太子の定めた十七条憲法の第一条に出てくることば。また「礼記」には「礼は之(これ)和を用(も)って貴しと為す」とある。(新明解故事ことわざ辞典)
曽我・物部の内戦と曽我馬子による祟峻天皇の暗殺の後,摂政となった聖徳太子は冠位十二階,十七条憲法を定め国家体制を整え,遣隋使の派遣など平和・独立・対等の外交を展開した。十七条憲法は「統一され秩序正しく効率的で有徳な,そして,対外的に独立した新平和国家の創造のためのマニフェスト」(参考文献1)である。
よくできたマニフェストなので要点を抜き出して,解釈してみる。
(おもに政治を司る者に向けての条文である)
1条.「和」が最上の価値であり,従順になれ。議論すれば道理がはっきりし,良い結果を生む。
2条.仏・法・僧を大切にせよ。生き物を大切にするというのは世界中が認める教えである。
3条.君命は天の言葉であり,謹んで聞け。逆らえば天地がひっくりかえるような大事になる。
4条.政治を行う者は礼をわきまえよ。政治を行う者に礼が無いと民の礼は乱れて犯罪が増える。
5条.贅沢や欲望をなくして民の声によく耳を傾けよ。貧しい民の声はなかなか届いてこない。
6条.善い者は顕彰し,悪い者には懲罰を与えよ。上にへつらい下を扇動する者は国乱の元である。
7条.職責を全うし,職権を濫用するな。職務に人が要るのであって,人のための職務ではない。
8条.朝早く出仕し,遅くまで働け。さもないと緊急事態に対応できず,仕事が後回しになる。
9条.うそを言わず正しいことを行え。善いことと悪いことに分けないと何事も進まない。
10条.感情は殺せ。人によって考えが違う。人が怒っていたら自分が間違っていないかまず考えよ。
11条.上官は下官の仕事ぶりをよく見よ。功績には賞を与え過失には罰を与えよ。
12条.勝手に税を徴収するな。国家のために民の税があり,個々の役職のためにあるのではない。
13条.後任者は前任者に勝る職務を行え。聞いていないなどと前任者の責任にしてはならない。
14条.嫉妬するな。国家を治めることのできる千年に一人の優れた人材が出て来れない。
15条.公私混同するな。私怨によって不和が起き公務が疎かになる。1条を読め。
16条.民を使うときは時機を考えよ。衣食を蓄えるべき時期に労役を科すとどうなるか理解せよ。
17条.独断するな。重要な事ほどささいな間違いが大きく影響する。皆でよく議論せよ。
儒教・仏教・道教多彩であるが,訳している途中で不覚にも涙が出てきて止まらなくなった。
1400年経っても状況は変わらない。人材は現れていないのだ。
現在でもこのマニフェストは通用する。有れば必ず一票を投じたくなる。
誤解を恐れず,関連する故事成語を書いておく。
1条「礼は之に和を用(もっ)て貴しとなす」礼記
4条「礼は未然の前に禁じ,法は已然の後に施す」史記
6条「勧善懲悪」春秋左氏伝
8条「朝に其の事を忘るれば,夕に其の功を失う」管子
10条「怒りには則ち理を思い,危うきには義を忘れず」説苑
11条「信賞必罰」韓非子
参考文献1
深瀬忠一「聖徳太子の17条の憲法(とくに「以和為貴」)にたいする中国諸思想の影響と日本的総合およびその憲法文化的遺産と今日的意義(1)」,北星論集(経)第32号,1995
和を以て貴しと為す(わをもってとうとしとなす):人々がお互いに仲良くやっていくことがもっとも大切なことである。何事も調和が大事であるということ。聖徳太子の定めた十七条憲法の第一条に出てくることば。また「礼記」には「礼は之(これ)和を用(も)って貴しと為す」とある。(新明解故事ことわざ辞典)
曽我・物部の内戦と曽我馬子による祟峻天皇の暗殺の後,摂政となった聖徳太子は冠位十二階,十七条憲法を定め国家体制を整え,遣隋使の派遣など平和・独立・対等の外交を展開した。十七条憲法は「統一され秩序正しく効率的で有徳な,そして,対外的に独立した新平和国家の創造のためのマニフェスト」(参考文献1)である。
よくできたマニフェストなので要点を抜き出して,解釈してみる。
(おもに政治を司る者に向けての条文である)
1条.「和」が最上の価値であり,従順になれ。議論すれば道理がはっきりし,良い結果を生む。
2条.仏・法・僧を大切にせよ。生き物を大切にするというのは世界中が認める教えである。
3条.君命は天の言葉であり,謹んで聞け。逆らえば天地がひっくりかえるような大事になる。
4条.政治を行う者は礼をわきまえよ。政治を行う者に礼が無いと民の礼は乱れて犯罪が増える。
5条.贅沢や欲望をなくして民の声によく耳を傾けよ。貧しい民の声はなかなか届いてこない。
6条.善い者は顕彰し,悪い者には懲罰を与えよ。上にへつらい下を扇動する者は国乱の元である。
7条.職責を全うし,職権を濫用するな。職務に人が要るのであって,人のための職務ではない。
8条.朝早く出仕し,遅くまで働け。さもないと緊急事態に対応できず,仕事が後回しになる。
9条.うそを言わず正しいことを行え。善いことと悪いことに分けないと何事も進まない。
10条.感情は殺せ。人によって考えが違う。人が怒っていたら自分が間違っていないかまず考えよ。
11条.上官は下官の仕事ぶりをよく見よ。功績には賞を与え過失には罰を与えよ。
12条.勝手に税を徴収するな。国家のために民の税があり,個々の役職のためにあるのではない。
13条.後任者は前任者に勝る職務を行え。聞いていないなどと前任者の責任にしてはならない。
14条.嫉妬するな。国家を治めることのできる千年に一人の優れた人材が出て来れない。
15条.公私混同するな。私怨によって不和が起き公務が疎かになる。1条を読め。
16条.民を使うときは時機を考えよ。衣食を蓄えるべき時期に労役を科すとどうなるか理解せよ。
17条.独断するな。重要な事ほどささいな間違いが大きく影響する。皆でよく議論せよ。
儒教・仏教・道教多彩であるが,訳している途中で不覚にも涙が出てきて止まらなくなった。
1400年経っても状況は変わらない。人材は現れていないのだ。
現在でもこのマニフェストは通用する。有れば必ず一票を投じたくなる。
誤解を恐れず,関連する故事成語を書いておく。
1条「礼は之に和を用(もっ)て貴しとなす」礼記
4条「礼は未然の前に禁じ,法は已然の後に施す」史記
6条「勧善懲悪」春秋左氏伝
8条「朝に其の事を忘るれば,夕に其の功を失う」管子
10条「怒りには則ち理を思い,危うきには義を忘れず」説苑
11条「信賞必罰」韓非子
参考文献1
深瀬忠一「聖徳太子の17条の憲法(とくに「以和為貴」)にたいする中国諸思想の影響と日本的総合およびその憲法文化的遺産と今日的意義(1)」,北星論集(経)第32号,1995